2023.05.16
コラム
【看護師が解説】急な子どもの発熱や病気、病院に行く目安はどう判断する?
子どもが急に熱を出したり、けがをしたりするのは、よくあることです。
年齢や発達段階にもよりますが、子どもにとって自分の症状を大人に伝えることは難しいので、気づいたら症状が悪化していたということもあります。
大人が子どもの体調不良を予想するのは難しく、急な症状に慌てることも珍しくありません。
子どもの体調不良やけがで迷うのが「すぐに病院に行くかどうか」です。
特に働きながら子育てをしている方にとっては、仕事の調整もあるので、悩ましい瞬間だと思います。
そこで今回は、子どもに多い症状やけがを挙げたうえで、病院を受診する目安や普段から準備しておくといいことについて解説します。
ぜひ、仕事と育児の両立にお役立て下さい。
子どもに多い症状や事故とは?
子どもの体調不良やけがはよくあることですが、具体的にどのようなものが多いのか、最初に確認しましょう。
(1)症状
■発熱
発熱とは、体温が37.5℃以上の場合をいいます。*1
ただし、平熱には個人差があるので、37.5℃を超えたからといって必ずしも病気だというわけではありません。
また、体温は1日の中でも変動します。
以下のグラフは、新生児(生後4-5日)、乳児(生後6か月)、幼児(1-2歳)の体温の変化をグラフにしたものです。
グラフを見ると、年齢が上がるにつれて、1日の中で体温が変化するようになることが分かります。
大人の場合も、一般的に体温は朝に低くなり、夕方になると高くなります。
引用)独立行政病院 国立病院機構 新潟病院「子供が熱を出した時の対応」
https://niigata.hosp.go.jp/kango/activity/pdf/kangobu05.pdf p3
■咳、鼻水
咳と鼻水も、子どもに多く見られる症状です。
咳や鼻水が悪化すると、呼吸が苦しくなり、夜眠れなくなることもあります。
風邪やインフルエンザなどの感染症で多く見られますが、喘息やアレルギーが原因の場合もあります。
■下痢、嘔吐
風邪や胃腸炎、食中毒などさまざまな原因が考えられます。
また、下痢や嘔吐が悪化すると、脱水の心配も出てきます。
子どもは呼吸や皮膚から放出される水分量が大人に比べて多く、年齢が低いと「喉が乾いた」と訴えることも難しいため、脱水のリスクが高くなります。
■湿疹、かゆみ
アレルギーや蕁麻疹などで見られますが、手足口病や伝染性紅斑(リンゴ病)といったウイルス感染が原因の場合もあります。
(2)事故
子どもの成長はあっという間で、特に小さい子どもを育てている方は「目が離せない」と感じていると思います。
以下のグラフは、消費者庁がまとめた救急搬送された事故の種類を年齢別に分けたものです。
0歳では「落ちる」が31.2%と最も多いのですが、7-14歳になると15.1%となり、半分程度に減少します。*2
子どもの年齢や発達段階によって、起こりやすい事故が異なることが分かります。
引用)消費者庁 「第2章 子どもの事故防止に向けて」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/pdf/2018_whitepaper_0003.pdf p104
子どもの体調不良やけがが起きたとき、確認するポイントと自宅でできることとは?
子どもに体調不良やけがが起きると、大人はびっくりして慌ててしまいがちですが、まずは落ち着いて様子を観察することが大切です。
以下に、観察するポイントを挙げました。
(1)食事量、水分量、ミルクの量
栄養や水分が普段と比べて少なくないか、チェックします。
(2)排泄物の色、状態
例えば、子どもに多いロタウイルスは、便の色が白くなるという特徴があります。
便の色や状態は、病気を見分けるひとつの指針になります。
(3)嘔吐物の色、状態
排泄物と同様、嘔吐物の色や状態も重要な観察ポイントです。
嘔吐物に血が混ざっているときは消化管からの出血、緑色のときは胆汁が混ざっている可能性があります。
(4)睡眠がとれているか
体調不良やけがで何らかの症状がある場合、睡眠時間が短くなったり睡眠が浅くなりがちです。
そうすると、体力が十分に回復せず、治るまでに時間がかかってしまいます。
(5)普段の様子と比べてどうか
子どもの状態を観察するときの重要なポイントが、普段の様子と比べて変わったことがないかです。
これは、一緒に過ごしている大人にしか分かりません。
例えば、好きな遊びに誘っても興味を示さない、いつもよりもおしゃべりが少ないなど「あれ、おかしいな?」と思うときは注意が必要です。
上記のポイントは、医師が正しい診断を行うためにも必要な情報になります。
時間と一緒にメモをとって、受診時に持っていくと便利です。
そして、自宅でできる対応については、以下のポイントに注意してみてください。
(1)無理に食べさせたり飲ませたりしない
特に嘔吐や下痢が続くと脱水が心配になりますが、飲食によって状態が悪化した消化管にさらに負担をかけることになります。
栄養のバランスは一旦考えずに、食べやすいものを食べられる量、無理せず与えましょう。
水分も、少しずつ摂るようにします。
(2)できるだけ家で安静にする
子どもに「安静にして」と言っても難しいかもしれませんが、早くよくなるためにもある程度安静にすることは必要です。
カードゲームやブロックで遊ぶ、テレビや動画を見るなど、あまり体を動かさなくても楽しめる遊びを提案してみてください。
どういうときに病院に行く?子どもの体調不良やけがで判断する基準とは
子どもを観察するポイントを踏まえて、どういったときに病院を受診した方がいいか、基本となるポイントをまとめました。
(1)普段の様子と違って元気がない
子どもが元気がないときには、何らかの原因があることが多いものです。
症状やけがの様子から問題なさそうと判断せず、すぐに病院に行きましょう。
反対に、熱や咳などの症状があっても、普段と変わらず過ごせているのであれば、慌てずに少し様子を見ても問題ない場合もあります。
(2)食事と水分が摂れず、尿の量が減った
食事や水分が摂れず、尿の量が減ると、脱水の可能性が高くなります。
必要に応じて点滴を行い、栄養や水分量のバランスを調整する必要があります。
(3)嘔吐や下痢を何度も繰り返す
嘔吐や下痢があっても、数回で治まり、その後元気に過ごせているのであれば問題ないことが多いでしょう。
しかし、何度も繰り返す場合は、詳しく検査をして適切な治療をしなければいけません。
(4)息苦しい
息苦しさは体の中の酸素が足りなくなる可能性があり、また症状そのものによって不安が大きくなります。
呼吸の回数が多い、肩を使って呼吸をしている、顔や唇の色が悪いような場合には、すぐに病院を受診しましょう。
なお、上記のポイントに関わらず、生後3か月未満の子どもが発熱した場合には、病院を受診します。
普段から気を付けておくポイント
子どもがいつ体調を崩したりけがをするか分からないからこそ、普段から備えられるものは備えておくと安心です。
(1)「普段と違う」と感じたことをメモしておく
明確に症状が出ていなくても、「普段と違うな」と感じたことをメモしておくと、その後、何かの症状が出たときにいつから体調が悪くなったのか分かりやすくなります。
日にちと時間も忘れずに書いておきましょう。
(2)病院に必要な持ち物をまとめておく
病院を受診する前は、大人も慌てがちです。
そんなときに、診察券や保険証、お薬手帳など、必要なものをすぐに持っていけるようにまとめておくと便利です。
また、普段子どもと過ごしている人ではない人が病院に連れていくこともあると思います。
そのときのために、家族みんなで置き場所を把握しておきましょう。
(3)信頼できるかかりつけ医を見つけておく
かかりつけ医を決めておくと、普段の子どもの様子が分かっているので、診察の精度が上がります。
そのため、あちこちの病院を受診せず、できるだけかかりつけ医を決めるようにしましょう。
もし他の病院を受診するときは、これまでの経過や処方された薬を伝えます。
(4)夜間や休日に診てくれる診療所を調べておく
各自治体には、夜間や休日に診察してくれる診療所があります。
自宅の近くの診療所はどこにあるのか、電話番号や診療時間を事前に調べておくと、いざというときに慌てません。
また、夜間や休日に病院を受診するか迷ったときの連絡先として「子ども医療電話相談事業」があります。*3
全国どこからでも、「#8000」に電話をすると、医師や看護師が必要な対応をアドバイスしてくれます。
病院に行くかどうかの相談にも応じてもらえるので、不安がある場合は相談しましょう。
【まとめ】
子どもの体調不良やけがは、どのように対応したらいいのか迷うことも多いです。
特に、子どもが小さいうちは症状を聞くこともできず、大人も経験が浅いので、不安が大きくなります。
そんなときは、一旦深呼吸して子どもの様子を観察し、できることからひとつずつやっていきましょう。
今日ご紹介した内容が参考になれば幸いです。
【参照サイト】
*1
参考)独立行政病院 国立病院機構 新潟病院「子供が熱を出した時の対応」
https://niigata.hosp.go.jp/kango/activity/pdf/kangobu05.pdf p2
*2
参考)消費者庁 「第2章 子どもの事故防止に向けて」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/pdf/2018_whitepaper_0003.pdf p104
*3
参考)厚生労働省 「子ども医療電話相談事業(♯8000)について」
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html
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浅野すずか
フリーライター。看護師として病院や介護の現場で勤務後、子育てをきっかけにライターに転身。看護師の経験を活かし、主に医療や介護の分野において根拠に基づいた分かりやすい記事を執筆。