2022.10.25
コラム
夫婦で不平等になりがちな家事分担 どうすれば上手くいく?
夫婦、とくに子育てが始まると、夫の家事・育児について妻から不満の声が漏れがちです。
夫としては「自分はちゃんと手伝っている」という人もいますが、それでも妻から漏れる不満…
こうしたすれ違いが、夫婦仲に亀裂を生んでしまうことも珍しくはありません。
そこで今回は、夫婦の家事・育児分担の特徴を概観しながら、意見が合わない理由を探っていきましょう。
是非、上手な家事分担を考える参考にしてみてください。
国際比較で一目瞭然
突然ですが下の図は、6歳未満の子どもを持つ夫婦の、1日あたりの家事・育児関連時間を国際比較したものです(図1)。
図1 夫婦の家事・育児時間の国際比較
(出所:「男女共同参画白書」内閣府)
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/column/clm_01.html
もちろん国によって育児休暇制度は異なりますが、それにしても他の国に比べて夫の関与が明らかに少ないことがわかります。
日本は他国に比べて労働時間が長いという事情もありますが、それを差し置いても妻に負担がかかっているのではないかと筆者は感じます。
夫が「手伝っている」つもりでも・・・
さてこちらは、ライオンが家事に対する夫婦の意識についてアンケート調査を実施したものです。
家事を手伝っている、と夫が認識していても、実は8割の妻が不満を抱えています(図2)。
図2 夫の家事に不満があると回答した妻の割合
(出所:「夫婦の家事に関する調査」ライオン株式会社)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000035200.html
なぜこのような結果になってしまうのでしょうか。
2つの理由があると筆者は考えます。
ひとつ目はあちこちで聞かれる声です。家庭によって違いますが「家事のやり方」に対する不満です。
言わないとやらない、食器のすすぎ方がじゅうぶんでない、片付けが雑、少し手伝っただけで偉そうにする…などといった話はSNS上などでも多く見かけます。
ただ、この部分では、夫から「自分なりに頑張っているのに」という不満の声も漏れそうです。
しかし注目したいのは、もうひとつの要因です。
ライオンのこのアンケート調査では、夫婦の「やりたい家事」についてたずねています。その結果が下です(図3)。
図3 妻が自分でやりたい家事と夫がしたい家事
(出所:「夫婦の家事に関する調査」ライオン株式会社)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000035200.html
見事に「かぶっている」のです。
まず、分担を上手に決める必要がありそうです。
夫婦が本音で話せる魔法のシート?
上手な家事分担の方法として、「家事内容と負担の可視化」があります。モヤモヤしたまま流していくのではなく、まず可視化すれば本音も話し合いやすくなります。
実は、内閣府が「夫婦が本音で話せる魔法のシート」というものを公開しています。
その一部を紹介しますと、まず今の夫婦を再確認する材料として、生活時間を書き出してみるというステップがあります(図4)。
図4 夫婦の現在の生活を可視化
(出所:「夫婦が本音で話せる魔法のシート ○○家作戦会議」内閣府)
https://www.gender.go.jp/public/sakusenkaigi/pdf/sakusenkaigi.pdf
そして、家事分担について考えるために下のようなチェックシートもあります(図5)。
図5 家事・育児について可視化
(出所:「夫婦が本音で話せる魔法のシート ○○家作戦会議」内閣府)
https://www.gender.go.jp/public/sakusenkaigi/pdf/sakusenkaigi.pdf
お互い、日々同じ時間に何をしているかは見ることができません。これが揉め事の理由になりがちです。
そして人によって得手不得手もありますから、何を負担に感じるかは夫婦によって異なるでしょう。
これらを可視化し、優先順位と分担度合いを決める話し合いをしてみましょう、という提案です。
なお、内閣府は、家事や育児の上手な分担をするためのコツをこのように紹介しています*1。
・2人で“パラレル家事”2人が同時に別の家事をこなす「パラレル(同時並行)家事」は、超効率的。レギュラーの組み合わせ(ex:料理×食卓準備、掃除×おふろ)を決めておくとスイスイ片付きます。一方が家事、もう一方がダラダラはなるべく避けましょう!
・余分な家事は“断捨離 立派な料理が作れなくたって、余分な家事を減らすことも大切なこと。靴下の脱ぎっぱなし、テーブルの物置化、ポケットのゴミ…日々の暮らしをチェックし、減らせるものを考えてみましょう。 ・“言われる前にやる”で信頼は急上昇! 「わざわざ言わないとやってくれない」家事シェアをする際の代表的なストレスとも言われています。逆にいうと、率先して動くだけで信頼は急上昇!たとえ小さな家事でも、その心遣いに相手は救われるんですよ。 ・意外なレスキューワード「子どもと遊びに行くね」 子どもの相手×家事=超ヘビーワーク! この2つが分担できるだけで、ぐっと楽な気持ちに。思い切って自分&子どもだけでお出かけすると、パートナーは喜ぶかもしれません。 ・他人と比べない ついつい他人の家庭がまぶしくみえがち。けれど、本当の家族の実態なんて外から見ても分からないものです。他所を引き合いに出すのは夫婦間の大きな亀裂を生みます。気を付けましょう! |
うなずけることは多いのではないでしょうか。
第三者の助けや家事代行などの利用も
家事や育児の負担を可視化したうえで、折り合いをつけるのが難しい項目も出てくることでしょう。
そういったときには、家事代行サービスなどを利用するのもひとつの解決方法です。
他人に家の中を見られたくない、あまり家に上がって欲しくない、なんとなく恥ずかしい、といった意識からこうしたサービスを敬遠する人もいます。しかし、きちんとした事業者から派遣される人はひととおり研修を受けています。
筆者も体調不良時に何度か家事代行サービスを利用したことがありますが、都心で1時間2500円でした。それ以外の地域ですと、価格はもう少し下がるでしょう。
これを手頃と考えるか高いと感じるかは人それぞれですが、心の余裕や夫婦円満への投資と考えることもできます。
また、気が合う人に定期的に依頼することができれば話し相手にもなってくれます。ふたりだけで色々考えてしまうと、どうしても息苦しくなってしまいます。そういった意味では、第三者が時折訪れてくれることで救われることもあるものです。
ベビーシッターの依頼もひとつの選択肢です。
育児は長く続きます。
モヤモヤを抱えたまま家庭という閉鎖空間で暮らすうちにストレスをため込んでしまい、あるとき大爆発、とならないように、少し余裕を持てる分担プランを考えましょう。
*1
「夫婦が本音で話せる魔法のシート 『○○家作戦会議』」内閣府
https://www.gender.go.jp/public/sakusenkaigi/index.html
清水 沙矢香
福岡県出身。2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や統計分析を元に各種メディアに寄稿。